(此処に彼岸に至る智慧の心の完成を始める)

観自在菩薩。行深般若波羅密多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。舎利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識。亦復如是。舎利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不浄。不増不減。是故空中無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。乃至無意識界。無無明。亦無無明盡。乃至無老死。亦無老死盡。無苦集滅道。無智亦無得。以無所得故。菩提薩垂。依般若波羅密多故。心無圭礙無圭礙故。無有恐怖。遠離一切。顛到夢想。究竟涅槃。三世諸佛。依般若波羅密多故。得阿耨多羅三藐三菩提。故知般若波羅密多。是大神咒。是大明呪。是無上呪。是無等等咒。能除一切苦。眞實不虍。故説般若波羅密多呪。即説咒曰。羯諦羯諦。波羅羯諦。波羅僧羯諦。菩提薩婆訶。  
                      般若心経
 (此処に智慧の心の完成は終わる)

伝わるところによると養老二年の春、徳(とく)道上人(どうしょうにん)が突然仮死状態になり、冥府において閻魔大王に悩める衆生を救う為に観音三十三ヶ寺霊場を広める様に依頼される事から始まる。
 地蔵菩薩の化身(仏教思想外、中国思想)とされている閻魔大王は、徳道上人に三十三の宝印を託し観音霊場を信仰して三十三ヶ寺を巡礼した者が地獄に来た時は我が責任を持って浄土に送り返す約束をして徳道上人を蘇生開放した。この宝印をもって観音霊場三十三ヶ寺が出来たのです。上人は悩める衆生を引き連れて巡礼を重ねていくのであるが、まだ我が国には巡礼の思想や習慣が定着していなかった事もあり興隆をなす所までは行かず、上人は三十三の宝印を摂津の国、中山寺に埋められたと言い、やむなき事、後世に夢を託して一時中断しました。
 其れから二百七十年後、永延二年(988)に、花山法皇がこの宝印を掘り出して霊場を再興されましたところから、西国三十三ヶ寺観音霊場の祖は徳道上人であり、中興の祖は花山法皇と言います。
 僧侶の中国、国内の聖地巡礼はありましたが、西国三十三ヶ寺観音霊場は奈良時代から始まった我が国の朝野を問わず巡礼信仰の草分けであります。
 観世音菩薩は法華経普門品第二十五に登場する菩薩で衆生を救済する時、三十三のお姿に示現される事から、その数に合わせて三十三ヶ寺に定めたもので、その範囲は山城・大和・河内・和泉・摂津五畿と紀伊・播磨・丹後・丹波・近江・美濃十一ヶ国、今風に言うと京都・奈良・大阪・和歌山・兵庫・滋賀・岐阜の二府五県に渡り、山頂に十一ヶ寺、山腹に十一ヶ寺、平地に十一ヶ寺であるのも偶然でしょうか。

 この地域は我が国の地理上では国の中に当たりますが西国と言われる様になったのは世に巡礼の習慣がつき伊勢神宮に参拝して一番の那智山から打ち止めの美濃谷汲山に詣でて帰る東国の人達が言い習わした事からです。この霊場が遠路となる人達の為に便利上に写しが出来たのが現在ある各地の霊場であります。

 

参考・法華経普門品第二十五にある観世音菩薩三十三応現身(おうげんしん)
1・仏(ふつ) 2・辟支仏(びゃくしぶつ) 3・声聞(しょうもん) 4・梵王(ぼんおう) 5・帝釈(たいしゃく) 6・自在天(じざいてん) 7・大自(だいじ)在天(ざいてん) 8・天(てん)大将軍(たいしょうぐん)9・毘沙門(びしゃもん) 10・小王(しょうおう) 11・長者(ちょうじゃ) 12・居士(こじ) 13・宰官(さいかん) 14・婆羅門(ばらもん) 15・比丘(びく) 
16・比丘尼(びくに) 17・優婆塞(うばそく) 18・優婆夷(うばい) 19・長者(ちょうじゃ)婦人(ぶじん) 20・居士(こじ)夫人(ぶじん) 21・宰官(さいかん)婦人(ぶじん)
22・婆羅門(ばらもん)婦人(ぶじん) 23・童男(どうなん) 24・童女(どうじょ) 25・天(てん) 26・夜叉(やしゃ) 28・乾闥婆(けんだっば) 29・阿修羅(あしゅら)
30・迦楼羅(かるら) 31・緊那羅(きんなら) 32・摩喉(まごお)羅迦(らが) 33・執(しゅう)金剛(こんごう) 
以上、救う人の立場に応じて、三十三のお姿に示現されると言う。
参考・以下に書き表す観音は、一般的に知られているのは僅かで、これも示現数三十三に合わせて集めた観音の御姿です。

01・楊柳(ようりゅう)観音(かんのん):持楊枝 02・龍頭(りゅうず)観音(かんのん):雲中龍座 03・持経(じきょう)観音(かんのん):岩座持経 04・円光(えんこう)観音(かんのん):岩座 05・遊戯(ゆげ)観音(かんのん):雲中座 06・白衣(びゃくえ)観音(かんのん):白衣立ち 07・蓮臥(れんが)観音(かんのん):蓮華座合掌 08・滝見(たきみ)観音(かんのん):断崖滝見 09・施薬(せやく)観音(かんのん):岩座右手頬 10・魚藍(ぎょらん)観音(かんのん):持魚籠大魚乗 11・徳王(とくおう)観音(かんのん):持杖岩座 12・水月(すいげつ)観音(かんのん):水上蓮華 13・一葉(いちよう)観音(かんのん):水上蓮華 14・青頸(しょうきょう)観音(かんのん):岩座 15・威徳(いとく)観音(かんのん):岩上水面見 16・延命(えんめい)観音(かんのん):岩座 17・衆宝(しゅうほう)観音(かんのん):右手接手 18・岩戸(いわと)観音(かんのん):岩戸座毒蛇 19・能(のう)静観音(じょうかんのん):浜辺接手岩 20・阿耨(あのく)観音(かんのん):岩座滝見 21・阿摩堤(あまだい)観音(かんのん):獅子騎持魚果実 22・葉衣(ようえ)観音(かんのん):岩座 23・瑠璃(るり)観音(かんのん):水上蓮華座 24・多羅(たら)観音(かんのん):雲上立 25・蛤?(こうり)観音(かんのん):蛤前座     26・六時(ろくじ)観音(かんのん):持経典 27・普(ふ)悲観音(ひかんのん):山上立 28・馬郎婦(めろうふ)観音(かんのん):女人姿持法華経頭蓋骨 29・合掌(がっしょう)観音(かんのん):蓮華座合掌 30・一如(いちにょ)観音(かんのん):雲上 31・不二(ふじ)観音(かんのん):水上蓮華立 32・持蓮(じれん)観音(かんのん):持蓮華茎 33・灑水(しゃすい)観音(かんのん):持杖灑水器

以上の示現数をもって観自在に衆生を救済する事から、仏教思想の奥深い意味も込めて観自在菩薩と称されますが、各霊場寺院には以上のようなお姿は見られません。
霊場には天台と真言宗の
六道救済、六観音(七観音)の御姿が本尊になっています。強いて以上の観音を覚える必要は有りませんが、経典に出てくる示現される御姿と札所三十三ヶ寺の本尊は違うことを心に留めていてください。現在の一番札所は青岸渡寺ですが、その始まりは一番は長谷寺でした。打ち止めが三室戸寺として寺門派三井寺の僧が巡礼したと伝えられています。
 長谷寺は根本道場と称され、その所以は徳道上人が長谷寺の開祖で有った事からです。霊場の開祖、中興の祖等の徳を讃えて番外と称した霊場が三十三ヶ寺に三寺院が加わります。番外はそれぞれの本山や祖師の縁がある寺院でもさしつかえは有りませんが、法起院・元慶寺・花山院が基本となっています。




トップページ